数年前まで2000円台で購入できたお米が、今では4000円台になることも珍しくありません。
家計への負担が大きくなる一方で、「お米が高くなったなら、米農家の収入も増えているのでは?」と感じる人もいるのではないでしょうか。
この記事では、米価格の変化を追いながら、米農家の収益、現在の状況、そして実際に米を作っている人の声から考えてみます。
米価格はなぜ高騰したのか

長い間、米の価格は大きく変わりませんでしたが、近年スーパーで販売される米の価格は大きく上昇しました。
以前は5kgで2000円台の商品も珍しくありませんでしたが、2024~2025年には3000円台、4000円台の商品も目立つようになりました。
では、なぜここまで米の価格が上がったのでしょうか。
大きな転機となったのが、2023年の記録的な高温です。
高温によって米の品質が低下し、その後の供給への懸念が強まりました。
さらに2024年には、流通業者が早めにお米を確保する動きなども重なり、米の品薄感が強まっていきました。
夏には南海トラフ地震臨時情報や台風の報道などによって、消費者の間でも買い急ぎが起こりました。
このように、米価格の高騰には、天候による生産への影響だけでなく、需要と供給の変化、流通段階での動き、生産コストの上昇など、さまざまな要因が関係しています。
つまり、今回の米価格高騰は、
「お米が突然高くなった」
という単純な話ではなく、いくつもの要因が重なった結果と考える必要があります。
備蓄米の放出が始まり、新米が出回るようになれば、米の価格も少しずつ落ち着いていくのではないか。そう考えていた方も多いのではないでしょうか。
米価格が上がって米農家の収益は増えたのか

米が以前より高く販売されるようになったことで、
「米農家は今、かなり儲かっているのでは?」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、売上が増えることと、利益が増えることは同じではありません。
米価格の上昇で、農家の売上・所得も増えている
結論からいうと、米価格の上昇によって、稲作農家の収入や所得は実際に増えています。
農業利益創造研究所が、青色申告を行う個人農家20,292人の2025年の農業簿記データを分析したところ、稲作を含む「普通作」の収入金額は、2024年から2025年にかけて23.6%増加しました。
さらに、同調査では2025年の「普通作」の世帯農業所得も増加しています。ただし、これはすべての米農家が同じだけ所得を得ているという意味ではなく、地域や経営規模によって大きな差があります。
では、なぜ米価格が上がったのに、「米農家は儲からない」と言われるのでしょうか。
「米が高い=農家が儲かる」ではない

米の販売価格が上がれば、農家の売上も増えますが、米を作るためには、肥料、農薬、燃料、農業機械など、さまざまな費用がかかります。農林水産省も米の生産費を継続的に調査しており、生産コストを確認することができます。
つまり、
米の価格が上がった
↓
農家の売上が増えた
↓
そのまま利益が大幅に増えた
とは限りません。
販売価格が上昇した一方で、生産に必要な資材や燃料などの価格も上がっています。
また、農家によって経営規模や販売先、所有している農機具なども違います。
米づくりにかかる費用
農林水産省の令和6年産米の生産費調査では、個別経営体が米60kgを生産するためにかかった費用は、平均で15,814円でした。
ただし、米づくりにかかる費用は、農家によって同じではありません。田植え機やコンバインなどの費用は、作る量が多いほど1kgあたりに分散できるため、農地の規模が大きい農家ほど、米60kgあたりの生産費は低くなる傾向があります。
そのため、同じ60kgのお米を販売しても、農家の規模によって残る利益には差が出ます。
さらに、直販や通販では、米袋などの包材や精米、保管、発送などの費用も必要になります。
このように、米の販売価格が上がったからといって、その上昇分がそのまま農家の利益になるわけではありません。
消費者からすると、今のお米は「高い」と感じるかもしれません。しかし、様々な食品が値上がりする中「この価格で、生産者は来年も米を作り続けられるのだろうか」と、消費者も疑問を持つことが必要な時代なのかもしれません。
数字だけでは見えない、米農家の大変さ

統計を見るだけでは、米農家が実際に何を感じているのかまでは分かりません。
そこで、実際に米を生産している農家の声を紹介します。
100年以上続く米農家:いち田さん
「米は儲からない」というイメージに対して、実際に米づくりを続けるいち田さんは、どのように感じているのでしょうか。
いち田さんは、自身の発信の中で、米だけで見ると年間200万円以上の赤字だった経験について語っています。
米の販売価格が安く、米だけでは経営が成り立たない。そんな状況の中で、大豆や麦への補助金によって農業全体としてはなんとかプラスになっていたといいます。
一方で、農業機械の修理や買い替えなど、米を作り続けるためにはさまざまな費用がかかります。
米の価格が上がった今、以前と状況は変わってきています。それでも、いち田さんの経験からも、米だけの収支では農業経営が成り立たない時期があったことが分かります。
「お米が人生を変えた」──僕が農業に懸ける理由|いち田|ごはんで家族を整える米農家
親子でつなぐ米づくり|ゆうとさん
ゆうとさんは、農業に関する情報を発信しながら、自身も米づくりに携わっています。
発信の中では、農家の収入や時給について触れながら、それでも農業を続けたいと思う理由について語っています。
もちろん、農業を続けるためには、きちんと収入を得られることが大切です。
その一方で、自分たちが作ったお米を食べてもらうことや、農業そのものへの思いも、米づくりを続ける力になっています。
米価格の数字だけでは分からない、農家自身がどんな思いで米を作っているのか。そこには、価格だけでは測れない価値があるのかもしれません。
里山を守るNPO法人 里地里山問題研究所(さともん)
兵庫県丹波篠山市の限界集落で、山あいの小さな田んぼを守る活動を続けているのが、NPO法人 里地里山問題研究所(以下、さともん)です。
米づくりだけでなく、草刈りや水路管理、獣害対策などにも多くの手間がかかり、「この先、誰が田んぼを継いでいくのか」という担い手の問題もあります。
2025年の概算金は30kgあたり16,200円でしたが、2026年は8,500円。一方、30kgのお米を作る費用は、人件費や機械の購入費、獣害対策などを含めなくても約9,000円かかるといいます。
それでも、さともんさんが販売する里山のお米は、玄米5kgは6,600円。
決して安い価格ではありませんが、その価格は「いくらなら買ってもらえるか」ではなく、「いくらなら農業を続けられるか」という考えから設定されています。
先祖から受け継いだ田んぼを守るために、米の価格を「高い・安い」だけでなく、「その価格で農家が続けていけるのか」という視点で考える大切さが伝わってきます。
米価格は落ち着いた?増え始めた米の在庫

米価格は、ずっと上がり続けているわけではありません。
農林水産省によると、2026年6月末の民間在庫は194万玄米トンと、前年同月より72万トン多くなっています。
米が足りず価格が上がっていた状況から、今度は在庫が増え、需給のバランスが変わり始めています。
米が足りなくて価格が上がる。
↓
生産量や供給量が変化し、在庫が増える。
↓
今度は米が余り、価格が下がる。
こうした動きになれば、農家にとっても新たな問題になります。
安すぎれば作り続けることが難しくなる。かといって価格が上がり続ければ、消費者の負担が大きくなり、需要とのバランスも変わっていく。
米の価格は、単純に「高ければいい」「安ければいい」というものではありません。
生産者が米を作り続けられ、消費者も買い続けられる。その両方が成り立つ価格とは何なのか、考える必要があります。
「米離れ」は本当?保育園の給食現場で感じること

一方、私は保育園の調理現場で、日々子どもたちの食事を作っています。
そこで感じるのが、
「子どもたちは、本当にお米を食べなくなっているのだろうか?」
という疑問です。
実際の給食では、ご飯をよく食べる子どもたちがいます。おかわりをする子も多く、おにぎりやチャーハンなど、米を使ったおやつを喜んで食べる姿もあります。
もちろん、これは一つの保育園で見ている光景であり、これだけで日本全体の米離れについて判断することはできません。
それでも、日々子どもたちと接している立場からすると、「お米そのものの需要がなくなった」とは、必ずしも感じません。
私たち消費者にできること

米問題は農家だけの問題ではなく、消費者がどのようにお米を買い、食べるかも、これからの米づくりに関係しています。
国産米を選ぶことも、これからの米づくりを支える一つの選択
私たちが国産米を選ぶことも、日本の米づくりを支える一つの選択肢です。
もちろん、外国産のお米が悪いということではありません。価格や用途など、それぞれの家庭に合った選択があります。
ただ、国産米を作り続ける農家が減れば、国内の米の生産量が減っていく可能性もあります。
米農家のいち田さんも、外国産米の輸入拡大について、「安いお米」が選ばれ続けることで国産米の生産者が減り、将来的に国産米そのものが減ってしまうことを懸念しています。さらに、農家の減少が食料安全保障にも関わる問題になると、自身の発信で伝えています。
今、目の前にある「安いお米」を選ぶことだけを考えるのではなく、
「子どもたちが大きくなったときにも、国産のお米を選べるだろうか」
と考えてみる。
そのためには、日本で米を作り続けられる環境を残していくことも必要です。
「お米を買う」という日常の選択が、これからの米づくりを考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。
外国産米の輸入拡大で国産米はどうなる?米価高騰の裏にある本当の問題|いち田|ごはんで家族を整える米農家
予約購入という選択肢
さともんさんの「いくらなら続けられるか」という考え方と同じように、消費者側にも「作り続けてもらうために買う」という選択肢があります。
実際に生活クラブやパルシステムなどでは、お米を予約して定期的に利用する仕組みがあります。
生活クラブは、予約によって「食べる約束」ができることで、生産者が栽培の見通しを立てやすくなると説明しています。
米づくりは、必要になったからといってすぐに増やせるものではありません。
田植えをしてから収穫するまでには一定の期間が必要で、作付けする面積や品種なども、あらかじめ計画しておく必要があります。
そのため、
「今年はお米が足りないから、来月からたくさん作ろう」
というわけにはいきません。
反対に、せっかく作ったお米が余ってしまえば、在庫を抱えることになり、生産者にとって負担になる可能性もあります。
だからこそ、あらかじめ「このお米を食べる」という需要が見えていることは、次の作付けを考えるうえでも意味があります。
予約という仕組みは、生産者が先の需要を見通しながら米づくりを考えるための仕組みの一つといえます。
消費者が「必要なものを必要なだけ買う」だけではなく、「作り続けてもらうために買う」という考えが増えることが、大きな変化につながるかもしれません。
まとめ

米は、安ければいい、高ければいいという単純なものではありません。
生産者が作り続けることができ、私たち消費者も買い続けることができる。
そんな米づくりを残していくために、私たちがどんなお米を選び、どのように買うのかを考えることも、大切なのではないでしょうか。
子どもたちが大きくなったときにも、国産のお米を選べる。
そんな未来を残すために、今のお米の価格について考えてみることも、私たちにできることの一つなのかもしれません。
今回もご閲覧ありがとうございます。
よしみけ(´▽`*)


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